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心理学ワールド 87号 私のワークライフバランス 子育てに追われて 綿村 英一郎(大阪大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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バランス

私の

 「仕事も生活もあきらめない」 を応援する連載の第 2 回目は, フルタイムのパートナーや息子 さんの年齢などに応じて,柔軟 にバランスを取られてきた,ワ ンオペ育児経験者の綿村英一郎 先生です。  私の家族は,製薬関係の会社に フルタイムで働く2歳年上の妻, 今年9月に12歳になった息子,私 の3人です。2017年4月から単身 赴任を始めるまで,子育ては主に 私の担当で,妻が仕事で忙殺され ていた一時期は「ワンオペ」にな ることもありました。表1は,息子 が乳児園に入ったときから現在ま での私のキャリア,平日の(夜間 含む)活動時間の配分(子育て1 仕事2),心配や考えごとといった 心理的リソースの配分を示してい ます(波はありますが,ざっくり 均しました)。  ①から③まで時間配分があまり 変化しないのは,息子を預けて仕 事する時間がずっと確保できてい たからです。この間に途切れず預 けることができたのは実に幸運で した。一方で,心理的リソースの 配分は仕事にシフトしていきま す。①のときは,研究の行き詰ま り感などよりも「早く迎えに行き たい」という思いのほうがいつも 勝っており,子育てへの配分過多 になっていました。その偏りは保 育園の卒園まで続きました。これ には先述のワンオペなる状況が喫 緊であったという事情が関わって います。②の時期の妻は,朝4時 半の始発で出張し午前1時過ぎに 帰宅といった日が週に何度もあっ たので,子育て(と家事)を一人 でやるしかない私にとっては,息 子の予定が前提での研究活動とな り,迎えの時間が来ればその日の 研究は実質的に終了でした。③の 時期は学童クラブがネックでし た。息子1人で通え,かつ私の職 場から1時間以内で迎えに行ける 学童という括りで探すと一つしか なく,しかも1年ごとの抽選でし た。この学童に3年続けて通わせ られたのは幸運でしたが,小学校 から学童へは地下鉄を乗り継ぎ, 駅から10分歩きます。ランドセ ルと学童用の手提げを持っての移 動は時間がかかります。天気が悪 い日は,学童からよく「まだ着い ていない」と連絡がありました。 遅すぎて探しに行かねばならない ときもありました(このときは電 車の遅延でした)3。この時期は 学童や夏休みの対応によく困り, 時間こそ仕事の配分が多くても, 心理的リソースの配分がコント ロールできないまま乗り切った3 年間でした。  このまま「運が大事で,あとは 気合い」という話で終わってしま うと味気ないので,私が大切にし ていた時間についてもふれてお きます。②の時期,入園当初は自 転車で送迎していましたが,まも なく徒歩に切り替えました。緑豊 かな霊園を30分,自然を観察しな がら毎日一緒に歩いたあの時間 は,息子の成長をふりかえったと き真っ先に思い浮かぶ貴重な記憶 になりました。学童からの帰りも (荷物は私が持って)歩きました。 バッファがないため,家では息子 を急かしてしまいがちでしたが, ゆっくり歩きながら話を聞く時間 を大切にすることでいくらか罪滅 ぼしになった気がしました。  単身赴任の現在,息子が高学年 になったこともあり,子育てに時 間をかける機会も必要もなくなり ました。しかし,今でも心理的リ ソースは3を切っていないように 思います。息子の話を聞いてあれ これ考えてしまう,あの時のクセ がまだ残っているようです。   1 ここでの子育ては,送り迎えや翌 日の準備などに限らず,食事や風 呂など生活一般でやっているよう な子育ても含んでいます。 2 大学院生・研究員の時期は研究活 動。 3 携帯電話をもたせられればいくぶ んよかったでしょうが,小学校が 認めてくれませんでした。

子育てに追われて

大阪大学大学院人間科学研究科 准教授

綿村英一郎

(わたむら えいいちろう) Profile ─ 東京大学大学院人文社会系研究科助教,日本学術振興会特別研 究員を経て現職。専門は法心理学,社会心理学,認知心理学。著 書は『感じる』(共編,大阪大学出版会),『自ら実感する心理学』(分 担執筆,保育出版社),『法と心理学』(分担執筆,法律文化社)など。 表 1 時間と心理的リソースの配分(子育て:仕事) 息子の学齢 ①乳児園 1 〜 3歳 ②保育園 4 〜 6歳 ③小学生前半(学童) 7 〜 9歳 ④小学生後半 10 〜 12歳(現在) 私のキャリア 修士 (東京大学)博士 (慶應義塾大学)特別研究員 (東京大学)助教 (大阪大学)准教授 時間 3:7 4:6 4:6 3:7 0:10 心理的リソース 9:1 8:2 8:2 5:5 3:7

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