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ワ
ク
ー
ラ
イ
フ
バランス
私の
「仕事も生活もあきらめない」
を応援する連載の第 2 回目は,
フルタイムのパートナーや息子
さんの年齢などに応じて,柔軟
にバランスを取られてきた,ワ
ンオペ育児経験者の綿村英一郎
先生です。
私の家族は,製薬関係の会社に
フルタイムで働く2歳年上の妻,
今年9月に12歳になった息子,私
の3人です。2017年4月から単身
赴任を始めるまで,子育ては主に
私の担当で,妻が仕事で忙殺され
ていた一時期は「ワンオペ」にな
ることもありました。表1は,息子
が乳児園に入ったときから現在ま
での私のキャリア,平日の(夜間
含む)活動時間の配分(子育て
1:
仕事
2),心配や考えごとといった
心理的リソースの配分を示してい
ます(波はありますが,ざっくり
均しました)。
①から③まで時間配分があまり
変化しないのは,息子を預けて仕
事する時間がずっと確保できてい
たからです。この間に途切れず預
けることができたのは実に幸運で
した。一方で,心理的リソースの
配分は仕事にシフトしていきま
す。①のときは,研究の行き詰ま
り感などよりも「早く迎えに行き
たい」という思いのほうがいつも
勝っており,子育てへの配分過多
になっていました。その偏りは保
育園の卒園まで続きました。これ
には先述のワンオペなる状況が喫
緊であったという事情が関わって
います。②の時期の妻は,朝4時
半の始発で出張し午前1時過ぎに
帰宅といった日が週に何度もあっ
たので,子育て(と家事)を一人
でやるしかない私にとっては,息
子の予定が前提での研究活動とな
り,迎えの時間が来ればその日の
研究は実質的に終了でした。③の
時期は学童クラブがネックでし
た。息子1人で通え,かつ私の職
場から1時間以内で迎えに行ける
学童という括りで探すと一つしか
なく,しかも1年ごとの抽選でし
た。この学童に3年続けて通わせ
られたのは幸運でしたが,小学校
から学童へは地下鉄を乗り継ぎ,
駅から10分歩きます。ランドセ
ルと学童用の手提げを持っての移
動は時間がかかります。天気が悪
い日は,学童からよく「まだ着い
ていない」と連絡がありました。
遅すぎて探しに行かねばならない
ときもありました(このときは電
車の遅延でした)
3。この時期は
学童や夏休みの対応によく困り,
時間こそ仕事の配分が多くても,
心理的リソースの配分がコント
ロールできないまま乗り切った3
年間でした。
このまま「運が大事で,あとは
気合い」という話で終わってしま
うと味気ないので,私が大切にし
ていた時間についてもふれてお
きます。②の時期,入園当初は自
転車で送迎していましたが,まも
なく徒歩に切り替えました。緑豊
かな霊園を30分,自然を観察しな
がら毎日一緒に歩いたあの時間
は,息子の成長をふりかえったと
き真っ先に思い浮かぶ貴重な記憶
になりました。学童からの帰りも
(荷物は私が持って)歩きました。
バッファがないため,家では息子
を急かしてしまいがちでしたが,
ゆっくり歩きながら話を聞く時間
を大切にすることでいくらか罪滅
ぼしになった気がしました。
単身赴任の現在,息子が高学年
になったこともあり,子育てに時
間をかける機会も必要もなくなり
ました。しかし,今でも心理的リ
ソースは3を切っていないように
思います。息子の話を聞いてあれ
これ考えてしまう,あの時のクセ
がまだ残っているようです。
1 ここでの子育ては,送り迎えや翌
日の準備などに限らず,食事や風
呂など生活一般でやっているよう
な子育ても含んでいます。
2 大学院生・研究員の時期は研究活
動。
3 携帯電話をもたせられればいくぶ
んよかったでしょうが,小学校が
認めてくれませんでした。
子育てに追われて
大阪大学大学院人間科学研究科 准教授
綿村英一郎
(わたむら えいいちろう)
Profile ─
東京大学大学院人文社会系研究科助教,日本学術振興会特別研
究員を経て現職。専門は法心理学,社会心理学,認知心理学。著
書は『感じる』(共編,大阪大学出版会),『自ら実感する心理学』(分
担執筆,保育出版社),『法と心理学』(分担執筆,法律文化社)など。
表 1 時間と心理的リソースの配分(子育て:仕事)
息子の学齢 ①乳児園
1 〜 3歳
②保育園
4 〜 6歳
③小学生前半(学童)
7 〜 9歳
④小学生後半
10 〜 12歳(現在)
私のキャリア 修士 (東京大学)博士
(慶應義塾大学)特別研究員
(東京大学)助教
(大阪大学)准教授
時間 3:7 4:6 4:6 3:7 0:10
心理的リソース 9:1 8:2 8:2 5:5 3:7